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- 父の肖像 - 転びそうになった自分をひょいと助けたエドガーをリルムは見上げ、礼を言ってから言ったものだった。 「エドガーがパパだったら良かったのに。」 無邪気な希望に若き国王は苦笑して答えた。 「リルムくらいの大きな子にパパとはまだ呼ばれたくないな。」 「あら、エドガーなら可能でしょ。」 これまた苦笑するしかない。 「私のパパはね、私とママを置いて出ていっちゃったの。 パパは、いつもなにか気にしていた。いつも、誰かのことを気にしていた。寂しそうに遠くを見ていた。」 小石を軽く蹴りながらそんなことを言うリルムは本当に寂しそうだった。 「きっとその人の所に行ったんだよ。リルムより、ママより、その人が大事だったんだよ。酷いよね。そんなに大事な女がいるのなら、ママと結婚なんてしなきゃ良いのに。おとなってわからない。」 「…リルム…」 「私、名前も知ってるんだ。パパがよく寝言で言っていたってママが言ってた。ビリーって人。ビリー、済まないって何度も言ってたんだって。」 「…リルム、ビリーというのは男の名前だが…」 言いにくそうなエドガーの台詞にリルムは心底驚いた様子だった。 「え？パパってホモだったの？」 後日、黒ずくめの男の肩に手を掛け、フィガロ王が言った。 「シャドウ、悪いことは言わないから娘には本当の事を言っておいた方が良いぞ。」 黒ずくめの男は全く顔色を変えずに答えた。 「なんの事だ？」 「分からないならいいがな。お前の娘は、はじめお前が女の所に逃げたと思い、今はホモだと思っている。家の恥だから生かしてはおけないそうだ。」 肩を２回、励ますように叩いてからフィガロ王は去り、残された黒ずくめの男はゆっくりと愛犬の方にががみこんだ。 「…インターセプター、どうしよう。」 男は、愛犬だけに見せる困惑しきった目をしてつぶやいた。 |