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- つかみそこねた自由 - 「表が出たらお前の勝ち。裏が出たら俺の勝ち。勝った方がこの城を出て自由の身になれる。そして、どっちが勝っても文句は云わない事。どうだ？」 兄はそう言って一枚のコインを示した。 「よーし。それじゃいくぞ。そーら！」 コインは月明かりを反射して輝きながら舞い落ち、兄の手の平に受けとめられた。 「いいな？開くぞ。」 もう一度確認してから、開く。 コインは表を向けていた。 「お前の勝ちだ。」 兄が微笑んで言った。 「兄貴…。」 「お前は、自由だ。」 自由…。それは確かに渇望している事ではあり、けれど…。 「俺のことは心配するな。これでも結構国王家業は好きなんだ。」 簡単に、あっさりと嘘をつく。俺は…。 「…もし、兄貴が勝っていたら、兄貴は何をしていた？」 「俺が？…そうだな、俺だったら…。」 兄は月を見上げ、遠い目をした。月明かりに照らされた長い金髪と月を写した青い瞳はこの世のものとも思えず、まるで一つの絵のようだった。俺は、この兄を置いて出ていくことにまだ戸惑っていた。 「俺は…。技術者になりたい。そして、フィガロ城をより強く改造したい。」 例え自由であってもフィガロを出る選択はしないと言う。兄らしい言葉だった。 「まず、空を飛べる機能を装備してだな、城からミサイルなんて発射できてもいいよな。非常時にはロボットに変形して、帝国の魔道アーマーや巨大怪獣と戦うんだ。腕からはロケットパンチを繰り出し、胸からは赤い殺人光線、脚からはミサイルだ。時速300キロのスピードと人間の500倍の反射速度を持ち、宇宙での生存も可能。イザと言う時には600人を収容したまま５年間を持ちこたえる食料と酸素を保存しておく事ができる、基地としての機能もあるスグレモノにしたい。」 俺は心底から感心した。 「すげえや。兄貴。それなら国王やりながらでもできるよ。」 「それもそうか。ちょっと時間が掛かるがな。」 「その時は俺をパイロットにしてくれよな。」 「ああ。いいぞ。俺は総司令官だからな。お前にパイロットは譲ってやる。」 「じゃあ、俺、きっと強くなって戻ってくるよ。」 そうして俺は張りきって城を出た。 1０年後、以前と変わらないフィガロ城を見て俺は心底からほっとした。しかし、兄の部屋に設計図を見つけたところを見ると、兄は結構本気だったらしい。 |