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- かなりあ - 月明かりだけを頼りに、ハリーは隣に座るドラコの顔を見つめた。訊ねる様に小首が傾げられ、ハリーが小さく笑みを浮かべる。それから甘える様にドラコの肩口に顔を埋めた。 ドラコが常に纏っている清涼な香りを吸込み、ゆっくりと息を吐く。 「ちょうど良いと思わない？」 「……何がだ？」 突然の質問に戸惑う様にドラコが訊ね返すと、ハリーはまた小さく笑った。何処か満足そうな笑みに、ドラコが訝しげな顔をする。 「……僕は時々、君を閉じ込めたくなるんだ。誰の目にも触れない、僕だけが行ける所に。そしたら君は僕だけを見て、君の世界には僕しかいなくなる」 そう言って、ハリーはドラコの華奢な身体に腕を回した。甘える様に抱き着いてくるハリーが子供の様だと、ドラコは小さく笑みを浮かべた。 「ほら」 満足そうに笑って、ハリーは肩口から顔を上げ、ドラコの顔を覗きこんだ。それからドラコの額に自分の額を押し当てる。真直ぐに視線を合わせ、ハリーがまた笑った。 「君は笑うだろう？ 子供っぽい独占欲だって。仕方ないなって」 「……それが？」 「僕、自分が独占欲の塊だって判ってるんだ。持たざる者だったからね。ちょっとおかしいくらいに、独占欲が強い。……こんな独占欲を示したら、きっと皆変な顔をするだろうね？」 小さく笑って、ハリーはドラコに軽く啄む様に口付けた。それを素直に受けるドラコに安堵した様に笑い、今度は深く口付ける。 小さく吐息が漏れた。ほんの少し動けば肌が触れるような近さで、翠の瞳が微かに細まる。 「でも君は笑うから。だから、ちょうど良いと思わない？」 「そう？」 「うん。そう。……それに君は、束縛されるのは嫌いじゃない。違う？」 ドラコは何も答えずに、ハリーの視線から逃れる様にゆっくりと目を閉じた。 背に回っていたハリーの指が、ゆっくりと腕をなぞり、肩へと滑る。首筋に、温かい吐息を感じた。 「笑ってよ。呆れた様に……。僕の独占欲を、仕方ないなって笑って……」 濡れた感触が首筋を滑り、鎖骨の上に微かな痛みが走った。 「そうしたら、僕は……」 安心できる。 そんな声が聞こえたような気がした。 癖の強い黒髪に指を差し入れ、柔らかく髪を梳く。ソファーに凭れたまま、ドラコはハリーの好きな様にさせていた。 束縛されるのが好きなわけではない。ただ、慣れてしまっているだけだ。 鳥篭の中で生まれ育った鳥が、例え出口が開いていても飛び立たない様に。 ―――だってそこに居ることは、不幸ではないんだよ……？ ドラコが小さく吐息を漏らした。煽られた様に、ハリーの愛撫が激しくなってくる。 「いい？」 強請る様に見上げてくる翠の瞳に強い感情の色を認め、ドラコは微笑を浮かべた。 そこに居ることは不幸ではない。慣れてしまったその状況はもはや気にもならないし、抜け出したいとも思わない。 でも自分は、この感情を覚えてしまった。 求められる事が、心地好い。 彼の独占欲に浸かる事が、心地好い。 ドラコは覆い被さるハリーの背にゆっくりと腕を回した。 痛みと快楽に、思考が侵される。 もう、戻れない。 鳥篭の中で、穏やかに微睡んでいられた頃には戻れない。 この心地好さを覚えてしまった自分は、もう心地好さを忘れて鳥篭には居られない。 ―――君が僕を要らなくなったら、どうしようか……？ ―――僕がこの心地好さを手放さなければならなくなったら、どうしようか……？ 飛立つことも出来はしないのに。 それの得られない鳥篭の中では、きっともう今までの様には生きてはいけない。 ―――そうしたら、君はどうする……？ ―――そうしたら、僕は……。 |
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こ、こういう話は如何でしょう（汗）。 黒い種の系列の話は置いていいものかびくびくしてます。 お嫌いな方が間違って見てしまわなければ良いのですが…。 宜しければ、ご感想など送って頂けると嬉しいです。 2003.09.20 |