- お伽話の向こう側 ３ -
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お題 ： ヘンデルとグレーテル 配役 ： ヘンデル＝ドラコさん。グレーテル＝ハリー。魔女＝スネ先生。継母＝ハー子さん。父親＝ロン。 昔々あるところに、ヘンデルとグレーテルという兄妹がおりました。兄妹はきこりの父親と先頃父親が迎えた継母とつつましく暮らしておりました。豪勢に暮らそうにも、父親の収入は微々たる物だったので仕方ありません。 さて、ある日の夜のこと。ヘンデルとグレーテルが眠っていると、隣の部屋から話し声が聞こえてくるではありませんか。どうやら父親と母親がひそひそと二人で話し合いをしている様です。ろうそく代節約の為日が暮れたら寝ろと厳しく言っている継母が夜に話し合いなどおかしいと、二人は聞き耳を立てました。 「やっぱり捨てるしかないわね」 「それは……あんまりじゃない？」 「なに？ 全員で飢え死にしても良いっていうの？」 「そんなことは……」 有無を言わさぬ風の継母の声と、気の弱そうな父親の声が微かに聞こえます。 どうやら自分達は捨てられる様だと、二人は顔を見合わせました。貧乏ここに極まれり、と言った感じです。さてどうしたものだろう、と二人は思いました。思惑通りに捨てられるのは腹が立ちます。が、このまま稼ぎの悪い父親の元に居ても平均的な生活水準を満たせるとは思えません。 二人はとりあえず寝ることにしました。 「……少なくともこいつと一緒に眠らずに済むのは良いかも」 「やだなあ。ベッドでも野宿でも温めあって寝よーよ」 そう言ってへらへらと笑うグレーテルの腹に、ヘンデルの肘がめり込みました。身体をくの字に曲げて苦悶するグレーテルのことは放っておき、ヘンデルは眠ることにしました。考えたところでどうにかなるものでもありません。 さて翌朝。二人が起きると早速継母は二人に父親と森に出掛けるように言いました。即断即決即実行です。その素早さに、二人は思わず感心してしまいました。にこやかに言う継母に比べて、父親は二人と目を合わせようとせず、あからさまに後ろ暗いところがある様子です。判り易過ぎます。 そんなこんなで森の奥についた頃、父親が突然悲壮な顔をして言いました。 「お前達、ここで今晩の薪を拾っていなさい。僕はそこらで仕事をしてくるからね」 「……なんていうか、ここまで嘘が下手だと呆れる通り越して哀れんじゃうよね」 「偽善だな。申し訳なく思っていたってどうせ捨てるんだから、いっそ開き直られた方がまし」 「ハーマイオニーの方が男らしいよねえ」 「あれはある意味見事だな。隠す気なんて欠片もなかった」 「餞の言葉が、森に住む魔女が狙い目、健闘を祈る、だもんねえ」 「誰かと違って、堂々としたもんだ」 「……君たちさあ、なんで普段は仲悪いくせにそういう時だけ仲良いの？」 連続攻撃を喰らい、父親は涙目になって言いました。こうなると、継母も子供達も持ち合わせの少ない良心を、人並みに持っているが故になにか損をしている気がしてきます。 「ええっ、仲良いよ？ いつでも何処でも３６５日人も羨む仲の良さでそれこそ……」 「誰がだっ」 泣きたくなっている自分を無視して二人がじゃれ始め、父親はますます空しくなりました。どうしてこんなのを捨てることを躊躇してしまったのでしょう。これなら捨てても逞しく生き延びるに違いありません。 「もういいよ。じゃあ頑張ってね」 「そちらこそ。新婚気分だね」 「良かったな」 「だからそういう時ばっかり〜」 意味深な笑いと共に掛けられた言葉に、父親は泣きながら帰路につきました。 父親を見送ると、さてどうしたものかと二人は顔を見合わせました。 鬱蒼とした森は暗く、日が暮れると危険そうです。 「……森の奥に住む魔女の家」 「だな」 二人は継母の言葉を思い出し、奥へ奥へと歩き出しました。すると驚いたことに、森の奥の開けた場所にお菓子で出来た家が建っているではありませんか。その形はなんともめるへんちっくです。 「……なんかキャラにあってない気がするんだけど」 「そうか？ この間も、実験室でケーキの上に飾る家と人形を作ってらしたけど？」 「……へえ。そう」 なにか想像してはならないものが頭に浮かび、グレーテルは慌てて頭を振ってその想像を追い出しました。そういうことは、聞かなかったことにするのが一番です。 「そういえば、お腹すいたねえ」 「とりあえず、この家は不衛生だから食べられないな」 「え？ そう？ 僕落ちたものでも賞味期限がちょっとくらい過ぎたものでも湿気ったものでも平気だけど？」 「……ちょっとって、どの位だ？」 「二週間は普通だよね。ものによっては三ヶ月でもへーき」 「……」 さすが作ってから何日も経ったケーキなどのお菓子で命を繋いでいたつわものです。胃腸の作りが違います。ヘンデルは人外のことは放って置くことにしました。 「ごめんください」 お菓子の家の扉を叩くのは気がひけたので、ヘンデルは声を掛けてみました。隣には家の外壁を壊して食べている者が居ますが気にしてはいけません。 「なんの用だ？」 暫くすると、全身黒ずくめの人物が扉を開けて現れました。 「……ここで暮らしていらっしゃるのですか？」 「そういう設定だから仕方がない」 黒ずくめの人物が低い声で答えます。その様は、めるへんちっくなお菓子の家にはあまりにも似合いません。ヘンデルは小首を傾げました。 「……雨が降ったら困るのでは？」 ヘンデルは天然でした。確かに雨に濡れたら溶けそうな家ですが、問題はそこではないでしょう。魔女は咳払いをすると、話を促しました。 「で、何の用かね？」 「家から追い出されてしまいました泊めてください有難う」 二人が暢気に会話をしていると、それに気がついたグレーテルが一息にそう言い、ヘンデルの手を引いて強引に家の中に入りました。もう片方の手には削った外壁がしっかりと握られています。まだまだ食べる気満々です。 「だれもお前に入っていいとは言っておらん！」 「ほんなひょひょいわふに」 「食ってから話せっ！！」 魔女とグレーテルは初めから仲良しさんです。ヘンデルは少し妬けてしまいました。 「……お前は台所にいって夕食の準備をするように。そしてミスター……もとい。ヘンデルはこちらに」 そういうと、魔女はグレーテルをそこに残してヘンデルと二階にいってしました。お菓子の家なのに二階があるとは恐ろしい話です。一体床と柱は何でできているのでしょうか。 それはさておき、グレーテルは後を追いたかったのですが、ここは仕方がありません。お腹をすかせているであろうヘンデルの為にも、夕食を作ることにしました。それに後々の為に竈の位置の確認も忘れてはいけません。 そんなこんなで一階に残されたグレーテルは、二階に連れていかれたヘンデルはどうしているかと考えながらスープを掻き混ぜていました。味見をしましたが味は完璧です。味に煩いヘンデルもこれなら美味しいと言ってくれそうです。あとは煮込むだけ、と一息ついたところで、ふとグレーテルは不安に襲われました。何故魔女はヘンデルだけを地下室ではなく自室に連れ込んだのでしょうか。それは話の展開を無視して直ぐに食べる為に違いありません。 グレーテルは慌てて階段を駆け上がりました。 「助けに来たよドラ……じゃないヘンデル！！」 「何が？」 魔女と勉強をしていたヘンデルが首を傾げました。それを見てほっとしたのもつかの間、グレーテルは鬼の形相で二人に歩み寄りました。 「何って、この邪悪な魔女は君を食べようとしてるんだよ！！」 「貴様と一緒にするなーっ！！」 魔女の右の拳が、グレーテルの顔面に鮮やかに沈みました。 そんなこんなで、魔女と子供達は仲良く暮らしましたとさ。めでたしめでたし。 |
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お伽話シリーズ。何を思ったか追加してみました（笑）。 唐突にねたが降って来たのです。他の字書きが進まないので、つい…。 このシリーズ、くだらなくて書くの楽しいのですよね（笑）。 2006.04.01 |