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- 君を連れて epilogue - どのくらい経ったのだろうか。僕は寒さで目を覚ました。いつの間にか眠っていたらしい。相変わらず僕はベッドの上に転がったままだった。 「いくら君でも、この寒さの中で眠っていたら風邪を引くぞ」 一瞬、幻聴かと思った。確かめるのが怖くて、僕は起き上がれなかった。今、彼の声が聞こえてきたと思ったのは、僕の願望からくる幻聴だろうか。 「……まだ眠っているのか？」 幻聴だという僕の考えを否定する様に、怪訝そうな、それでいてどこか心配そうな声が聞こえてくる。その声に促される様に、僕はゆっくりと身体を起こした。 「……ドラコ？」 「他の誰に見える？」 にこりともせずに、寧ろ苛立った様に彼がそう言う。寝台に腰掛けて見上げると、確かにそこに彼が居た。一分の隙もなく黒い衣服を身につけ、背筋を伸ばして立っている。二週間前よりは健康そうで、ほんの少し、痩せこけていた頬が元に戻っている様な気がする。 彼の顔をしげしげと眺めると、ふと、彼の眉が不快そうに動いた。 「しゃんとしろ！ シャワーを使ってこい。その見苦しい髭を剃れ。僕はだらしないのは嫌いだ！」 一息に言い、彼が僕を見る。それでも僕は動けない。 彼が寒そうだ。部屋を温かくしないと……。 頭の片隅で、僕はそんなことを考えた。だって、彼が風邪を引いたら大変だ。それなのに、僕は動けない。そして、口が勝手に動き出す。 「……ど……して……？」 僕の口から零れた質問に、物分りが悪過ぎると言いたげに彼が顔を顰めた。 「君を拾いに来てやったに決まっているだろう？」 呆れた様に溜息を吐き、彼がそう言う。全く、迎えに来たと言わない辺りが彼らしい。 尊大な、と形容しても良い風だった彼が、ふと表情を緩めた。莫迦の様に彼を見上げたままの僕に、柔らかな笑みを浮かべる。 「……ハリー。おいで。……怒ってないから」 まるで子供か犬が相手の様に彼が僕を呼ぶ。呼ばれて、漸く僕は彼に抱きついた。 涙腺の壊れた僕をあやす様に、彼が僕の背を擦る。やはり寒いのだろう。彼の身体は冷たくて、僕は暖房を点けなければと頭の隅で考えた。 暖房を点けなければ。彼が居るから、部屋を温かくしなければ。それに彼が居るんだから、部屋を綺麗にしないと……。 心の中でそう呪文の様に唱えている僕の涙が止まったのは、一体何分経ってからだったのだろう。 漸く彼の肩から顔を上げると、彼が小さく笑って僕にキスをした。 「ハリー。君、臭いぞ」 「……だって、風呂に入らなくても死なないし」 少々言い訳がましくそう言うと、彼が呆れた様に天を仰いだ。それからここ暫く梳かしてもいない髪を撫でる。多分それは、恐ろしく汚くなっていることだろう。 「全く、仕方がないな」 そう言って、彼が笑った。 - end - |
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ここまでお付き合いくださって、有難うございました。 この話、仮題はぽちを連れてでした。時々そういうハリーが書きたくなるのです（笑）。 そういえば結局、迎えに行ったドラコさんが情けない状態のハリーを見て密かに嬉しく思ったりした部分は入れられませんでした。 自分が居なくなってもハリーが平然としていたら、ドラコさんそれはそれで淋しいよな〜と…。 ご感想など頂けると、とても嬉しいです。 2007.07.31 |