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常に気だるそうに話し、他者に向ける視線は冷たい。無表情でなければ冷笑しか浮かべない顔に、そんなんで面白いのかな、とハリーは思った。同寮生に対しては微かに笑うこともあるようだが、全開の笑顔、などというものは存在しない様だ。それとも自分が見たことがないだけなのだろうか。 不快そうに眉を顰めたり、蔑む様に目を細めるのが、彼の一番多い感情表現らしい。 遠くから観察してみて始めて知ったことだが、自分に対する時は破格に感情表現が豊かな様だった。少なくとも自分は、彼が怒りや屈辱に顔を歪めたり、羞恥に顔を紅く染めるのを見たことがある。 それも一種の特別なのかな、と思ってしまった自分に、ハリーは半ば呆れた様に首を振った。例えそれが特別であったとしても、それは負の感情の意味合いだろう。 ふと顔を上げると、ドラコが上級生に話し掛けられているのが見えた。同寮生な為か、ドラコは礼儀正しく接している様だ。そのスリザリン生を眺めて、ハリーは顔を顰めた。同類の感、とでも言うのだろうか。彼は何処か緊張気味に話し掛け、なるべくその時間を長引かせているように見える。今までは気にしたことも無かったが、綺麗なものに惹かれるのは何も自分だけではないらしい。ドラコに向けられる視線が多いことに今更ながら気が付き、ハリーは益々眉間の皺を深くした。どうやらハーマイオニーの言っていたことは正しかったらしい。男女問わず、綺麗なものには惹かれるものなのだ。 はたしてそれは、絵画や彫刻を愛でるのと同じ事なのだろうか。自分の、それも。 ハリーがこっそりと眺めていると、ゴイルがドラコに声を掛けた。そろそろ教室に移動する時間だ。多分そのことを話しているのだろう。ドラコが上級生に何か話し、席を立つ。 ふと、クラッブがドラコの肩に触れた。それに振り返り、ドラコが教科書を受け取る。何事も無かったかの様な日常の光景に、ハリーは目を見開いた。 あれほど人に触れられるのを不快に思うドラコなのに、クラッブならばよいとでもいうのだろうか。 ハリーは奇妙な苛立ちを覚えた。大広間を後にするドラコを視線で追い、無意識に唇を噛む。 もし触れたのが自分であったなら、彼は迷わずその手を弾く……。 next |