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視線を感じて、ドラコは首を巡らせた。目が合った途端、視線が逸らされる。ドラコは怪訝そうに目を細めた。魔法薬学の実験中だというのに余裕な事だ。そう思ったが、ドラコは特に何をするでもなく鍋に視線を戻した。 あれはただの、気まぐれだったのだ。 英雄様も所詮は他の奴らと変わらないと、何処か失望を覚えた様な気がして、では自分は何かを期待していたのかと嘲笑いたくなるような可笑しさを覚えて、そして、試してみるのも一興かと思ったのだ。 嫌悪感は無かった。呆けた様に見開かれた目に笑いが込み上げた。そして、もしも彼があの時自分の手を取っていたなら、何かが変わったのかもしれないという思いが頭を過った。 そうしたら、あの記憶を葬ることが出来たのかもしれない……。 「グリフィンドール５点減点」 思考を遮る様にスネイプの声が響き、ドラコは視線をハリーの方に向けた。思った通り、そこでは何時もの様にハリーがスネイプから注意を受けていた。 沸騰してからと言ったはずだが。君は沸騰という言葉の意味をご存知無いのかね、と絡み付くような声音で言われ、ハリーは珍しく神妙に俯いていた。 ドラコの視線にハリーが気付いた瞬間、ドラコは嘲る様に目を細めた。ハリーの頬に朱が走る。言い掛かりを付けられるのは何時ものことと思っているのか、何時もふてぶてしいハリーが今日はやけに神妙な事に満足したのだろう。スネイプは早々に切り上げて他の生徒の指導に戻った。 ドラコは一瞬皮肉の一つでもと思ったが、その考えを直ぐに打ち消した。あの日から、奇妙にハリーの視線を感じることが多くなった。そうすると、苛立って皮肉を投げ掛けていた今までとは逆に、敢えて無視してやりたくなる。 沸騰した鍋の中の液体に薬草を磨り潰した粉末を入れながら、ふと、ドラコは莫迦莫迦しさに眉を顰めた。これではどちらにしても、奴に振りまわされているということではないか。忌々しい。 ドラコはハリーのことを思考から追い出し、実験に意識を集中することにした。 next |