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心臓が激しく鼓動していた。もしかしたら自分は今、赤面したまま廊下を歩いているのかもしれない。そんなことを考えながら、ハリーは足早に教室へと向かっていた。 友人二人に先に行くといって大広間を出たのは、昨日のことでドラコに話があったからだ。それなのに、気が付いてしまった手首の血に全く予定外の行動を取っていた。何でもない事の様に判創膏を渡し、目的を果たすことなくそのまま去ってしまった。 今、頭に残っているのは、目にした手首の細さと白さと、そこに滲んだ紅い血がその白に映えると思った事。そして、微かに触れてしまった指が弾かれなかったという事実。 ハリーはそんな些細なことで喜んでいる自分に、益々顔を紅くした。 「……何してんだろ」 小さく呟き、ハリーは大きく息を吐き出した。 一番内側の線の中に立ち入る事を許すということは、特別ということなのだろうか。とても狭いそこに立ち入る事が出来たとしたら、それは懐かない気位の高い猫を懐かせる様に、優越感を覚えるような心地よいものなのかもしれない。 果たしてそれは、どんな心地がするのだろう？ 魔法史の授業を右から左に聞き流しながら、ハリーはだらしなく頬杖を付いていた。隣ではロンがすでに熟睡し、更にその隣ではハーマイオニーがノートに忙しなくメモを取っている。授業に熱中しているというよりは、眠らないための防御策のようなそれに小さく笑みを浮かべ、ハリーは壁に掛かった時計に視線を移した。 今日の授業はこれで終わりだ。夕食の時間までには間があるし、今日は今のところ特に用事も無い。朝にしようと思っていたように、昨日のことでドラコと話をしてみようか。 ハリーは予定を決めると、自分を励ますように小さく頷いた。 next |