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また暫くドラコに避けられているのではと思える日々が続いたが、ハリーは特に行動を起こさなかった。時折、彼が自分を気に掛けているのが視線で判る。行動を起こさない代わりに、ハリーはロンとハーマイオニーと離れて一人でいる時間を極力作った。 彼が何故視線を向けているかの検討はついていた。彼は時折、困った様にローブのポケットに手を入れている。 判りやすい行動に、ハリーは小さく笑みを漏らした。そして同時に、安堵も覚えていた。まだ、機会はあるのかもしれない。 魔法薬学の授業が終わると、ハリーはロンとハーマイオニーと別れて、わざと一人でゆっくり廊下を歩いていた。相変わらず気の重くなるような授業だったが、今のハリーにはそんなことはあっさりと忘れることができた。なにせ魔法薬学は、スリザリンとの合同授業なのだ。期待と不安とに、不快はあっさりと押しやられていた。耳を澄まし、歩を進める。 「ポッター」 少し進んだところで、後ろから聞き慣れた声が聞こえた。ハリーは笑みを浮かべ、足を止めた。彼らしいことに、廊下には今は人気がない。 「やあ」 振り向いて笑って見せると、ドラコが何も言わずにハンカチを差出した。きちんと洗われ、アイロンが掛けられている。ハリーが受け取らずにハンカチからドラコに視線を移すと、彼が漸く口を開いた。 「返す」 「うん。……今、時間ある？」 「……何故だ？」 「話を、しよう」 眉根を寄せたドラコに、ハリーはにっこりと笑って見せた。 その部屋は、ハリーの知っている隠し部屋の一つだった。座り心地の良いソファーが一つ置かれており、誰も使う者はいないはずなのに部屋中掃除が行き届いている。 表からでは容易には存在に気が付かないその部屋に案内すると、ドラコは興味深げに室内を見渡した。 「こういう部屋は、多いのか？」 「多分ね。僕が見つけたのだけでも結構あるよ」 「ふうん」 小さく呟くと、ドラコはソファーに腰を下ろした。それからハリーを見上げて、微かに首を傾げた。 「で？」 「で……って？」 「話をするんだろう？ だから、何の？」 促されても、ハリーも深く考えていたわけではない。しかし、目の前のドラコは答えを待って小首を傾げている。ハリーは何かを答えなければ、と思った。 「ああ、そっか。ええと……ご趣味は？」 「何だ、それ」 噴出す様に、ドラコが小さく笑った。ハリーは微かに目を見開いた。彼は、笑うと可愛い。 ハリーは微かに紅くなってしまった顔を誤魔化す様に、ソファーに歩み寄ると、少しの空間を開けてドラコの隣に勢い良く腰を下ろした。伝わった振動に、ドラコがハリーを見る。 「……チャンスを、くれる？」 首を傾げて訊ねたハリーを、ドラコが真直ぐに見返した。 next |