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大広間へと向かう廊下で、ドラコはスリザリン寮の方角から来る一団と合流した。ドラコに気が付くと、クラッブとゴイルが慌てて駆け寄ってきた。 「遅かったね。図書室も覗いてみたんだけど居なかったから、何処に行ったのかと思った」 「ああ、ちょっとな」 肩を竦めて見せ、その話を打ち切る。二人は互いにちらりと視線を向けると、ドラコが話す気がないものと判断して口を閉じた。 スリザリン生に紛れて大広間に向かって歩きながら、ドラコはローブの左のポケットに手を入れた。そこにはもう返さなくてはいけないハンカチはない。 ドラコはハリーが突然態度を変えた事には苛立ちを覚えていた。今まで自分の、否、父の価値観を否定しておいて、今更あっさりと、同じように当たり前にそこにある容貌に価値を見出されたのには腹が立った。腹が立つと同時に、悔しかった。何時だって、彼は自分がすることには関心を向けなかったし、価値も見出さなかったのに、と。そして一番苛立たしいのは、彼の柔和な態度に戸惑いを覚えると共に、心の何処かで嬉しさを覚えている自分だった。 彼が自分を見ている事が、嬉しかった。そして、嬉しいと思うことが、屈辱だった。 その考えが薄れたのは、感情的になった自分に示したハリーの態度の所為だ。自分に掛けられた柔らかな声と、気遣うような態度。隣に立つハリーの持つ雰囲気に、何故か安堵を覚えていた。 ドラコはポケットに入れたままの手を軽く握った。 ハリーが自分を見て、嫌悪や不快の表情を浮かべることもなく話しをするのは嫌ではない。しかし、もう返すべきハンカチはない。 何も入っていないポケットは、何故か寂しいような気がした。 next |