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「魔法族って、家に閉じ篭って育つわけじゃないよね？」 目の前の赤毛を眺めて、間違ってもそんなことはあるまいと思いつつ、ハリーはそう訊ねてみた。隣に座っていたロンが、食事の手を止めて眉を寄せる。 「は？」 予想通りに返ってきた間の抜けた声に、ハリーは苦笑した。例え視線の先の双子をそう育て様としたとしても、出来はしないだろう。 「何それ。マグルはそれが普通とか？ 確か君、叔父さんに閉じ込められてたって……」 怪訝そうな顔のロンに、肩を竦めて見せる。 「あー違う違う。マグルもそんなこと普通はしないよ」 「そうね、深窓のご令嬢だとかならともかく」 相槌を打つ何気ないハーマイオニーの台詞に、ハリーはやはりそれかと思った。ドラコの育ちが少々変わっているように思えたのは、やはり魔法族だからという問題ではないらしい。 「で、いきなりなんでそんなことを？」 「……マルフォイが、家から出たことが殆どなかったって聞いたから」 「そりゃあ……お坊ちゃんだからじゃないの？」 「それも深窓のっぽいわね」 「うん……」 確かに、彼の仕草や態度からは育ちの良さが見て取れる。聞いた話からも、彼が閉じ込められた環境で育ったのだと判断できる。 それならば、そこまで厳しく管理された環境で育った彼が、何故あそこまで他人に触れられることを嫌悪するのだろうか。彼の家で彼に無礼を働く人間が居るとは思えない。他人に接する機会が少なかったからだろうか。しかしそれだけで、と疑問が浮かぶ。 今まで知らなかった、彼の繊細さと奇妙な従順さ。そして、抱き寄せて慰めたいと思った雰囲気が脳裏に浮かぶ。 ハリーはドラコのことを、もっと知りたいと思った。 ドラコを見つけることは、存外簡単だ。彼の行動は割合に決まっていて、しかも遠目から探すのも人目を引く容貌のお陰で容易い。 ハリーは図書室に足を踏み入れて、真っ先に見つけた白金に目を細めた。 ドラコが自分に気が付くように彼の居る奥へと向かうと、ハリーは本を探す振りをしてドラコの方に視線を向けた。視線を感じて、ドラコが読んでいた本から視線を上げる。にっこりと笑って見せると、ハリーの姿に驚いたのかドラコが目を見開いた。 促す様に廊下を指差したハリーに、ドラコが小さく頷く。手にしていた本を書棚に戻すと、ハリーは先に図書室を出た。 それにしても、にっこりと笑って見せた時にドラコが微かに喜色を見せた様に思えたのは、気のせいだろうか。それに彼は、不快そうな顔をするでもなく頷いていた。 ハリーは心臓が煩く跳ねるのを自覚した。 「……ポッター？」 掛けられた声に、ハリーは我に返った。怪訝そうな顔で自分を見ているドラコは、今は普段通りに見える。ハリーは素早く廊下に視線を向けると、今は近くに人が居ないことを確認した。 「この間の部屋で。今、いい？」 訊ねると、間を置かずにドラコが頷いた。ドラコは自分と一緒に歩いているのを人に見られたくはないだろう。ハリーはそう考え、先に行っていると伝えて歩き出した。 next |