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翌日に、来訪者があった。 その人物の顔を見た途端、僕は誤魔化し様もなく顔を顰めてしまった。しかし、それはあちらも同じようだった。全く、彼さえいなければ、二度と会わずにすんだだろうに。 「お久しぶりです」 曲りなりにも教え子の立場だったので、僕は諦めてそう挨拶した。今更無視などしても、大人気ないだけだろう。 スネイプは一瞥をくれて頷いただけで、口は利かなかった。それからウィーズリー夫妻に挨拶をすると、直ぐに彼に話しかけた。 「元気かね？」 「はい」 小さく答えた彼はいつもよりも寛いでいる風に見える。ウィーズリー家に引き取られるまでの間、ちょくちょく会っていたということなので、その所為だろう。それに、根性の最低な者同士気が合うに違いない。 「これを君にと思ってな」 言って、持っていた鞄からスネイプが本を取り出した。分厚い本を五冊ほど机に置く。彼は珍しく笑みを浮かべると、スネイプに謝意を伝えた。 スネイプに対して笑った彼を見て、僕はふと、普段の彼がとても表情が乏しいことに気が付いた。いつも笑うわけでもなく、泣くわけでも怒るわけでもなく、目を伏せている。まるで自分の存在を空気に溶け込ませるように存在感がない。 やはり彼は、ずっと父親の権力を笠に着て、傲慢で、不遜な態度で平然と暮らしていたのだろう。庇護がなければ、臆病な彼のことだ。攻撃されないように大人しくしているのも当然かも知れない。 本を持ってくるというのは、勿論口実に過ぎない。夕食の後までスネイプはウィーズリー家にいて、彼が眠るために二階に上がっていくのを見送った。 「様子はどうですかな？」 「なかなか馴染んでくれないわ。顔色もよくならないし。食欲も……前よりはましになったけど……」 「……新しい環境に馴染むには、時間が掛かる。……ストレスもあるだろうし」 そう言って、スネイプが意味ありげに僕を見た。その視線は、お前の所為だと言わんばかりだ。何でも僕の所為にするのがお得意な彼らしい。 「別に苛めていませんよ。あまり関わらないようにしています」 僕がそういうと、彼は莫迦にするように鼻で笑った。全く持って、スネイプは相変わらずだ。 「急がないで様子を見るべきでしょうな。記憶を弄られて不安定なままでは、不安で当たり前だ」 スネイプが低く呟くような声で言うと、ウィーズリー夫人が寂しそうに目を伏せた。 「あまり口も利いてくれないの」 「ああ、それは昔からです。彼は、あまり話さない子だった」 「へえ。ものによっては良く口が滑るようでしたけど？ 嫌味とか、皮肉とか、告げ口とかは」 スネイプの言い様に、つい口が滑った。彼が無口だなど、聞いた事もない。 「貴様には、そうだろうよ」 まるでお前のような無礼者には当然だと言わんばかりの口調だ。思わず顔を顰めると、ウィーズリー氏が咎めるように僕を見た。それから彼らしい大様さで口を開く。 「気長にやるよ。時間はまだまだある」 「それがいいでしょうな。それと、あまり身体が丈夫な子ではないので……」 「判っていますとも」 心配要らないとばかりに頷いたウィーズリー夫人に頷きを返し、スネイプは暇を告げた。 next |