|
「ハーマイオニー！ ハーマイオニー！」 乱暴にノックをすると、直ぐに扉が開いた。どうやら先程まで入浴していたらしい。タオルで髪を拭き取りながらハーマイオニーが顔を出した。 「ハリー？ どうかしたの？」 「ドラコが居ない！ もしかしたら、外に出たのかもっ」 「え？」 「僕は外を探してくる！ 君は……」 「ロン達に知らせてくるわ。気をつけて」 こういう時、ハーマイオニーは頼りになる。尋常ではない僕の様子に、てきぱきと行動を開始する。後のことは彼女に任せておけば大丈夫だろう。 「うん。頼んだよ！」 言って、僕は階段を駆け下りた。 思った通り、台所の時計の針は彼が家に居ないことを示していた。やはり彼は、この雨の中を外に出て行ったらしい。外への扉を開けると、耳に入る雨音が激しくなった。風は強くは無いが、気温が低い。 小さく舌打ちして、僕は箒に跨り雨の降りしきる空に舞い上がった。 雨の中では、視界が悪い。しかもこう暗いのでは、数メートル先すらよく見えない。一旦地上に降り、懐から杖を取り出して眼鏡とローブに防水の呪文を掛ける。フードを目深に被り、僕はまた低空飛行を続けた。 ホグワーツでシーカーをやっていたお陰で、雨の中を飛ぶ事に支障はなかった。あの小さなスニッチを探していたのだ。周囲に目を向けることも問題ない。 ただ、この雨が気掛かりだった。 身体の弱い彼が長時間雨に打たれたりすれば、どうなることか。 「くそっ」 小さく舌打ちし、箒の柄を握り締めると、僕は速度を上げた。 子供の歩ける距離など高が知れている筈だ。しかし、彼は一体いつ家を出たのだろう？ 彼の性格から言って恐らく道なりに進んだ筈だ。森などの暗がりに向かったとは思えない。暫く家の周りを旋回した後、そう考えて道を真っ直ぐに進んでみたが、かなり進んだ気がするのに一向に彼は見つからなかった。勘で選んだ道は間違いだったのだろうか。もう一方の道だったのだろうか。僕は何処まで行ったらこの道を諦めて他を探せば良いのか見当が付かなかった。焦りだけが募ってくる。 話を、聞かれていたのだろうか？ そして、彼はどう思ったのだろう？ 話すなら小さな声で話せよ、大人気ない。 八つ当たり気味にそう心の中でロンに悪態を付き、僕は首を巡らせた。 next |