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抱き上げた彼は全身雨に濡れていた。冷えた身体は、小さく震えている。僕は自分のローブの前を開けて雨と風が当たらないように彼を包み、箒に跨った。ここから家までは、箒でも少し時間が掛かる。 「息苦しいかも知れないけど、少しの間我慢してね」 返事はなかった。僕にしがみつく力は弱い。僕は彼が意識を失った時の為に、彼をしっかりと抱えなおした。あまりスピードを出さない方が良さそうだ。 降る雨も、濡れた服も冷たかった。けれども、僕にはそれは気にならなかった。ただ、腕に抱えた彼だけが気掛かりだった。 夜道を低く飛びながら、ぬくもりを分ける様に彼を抱きしめる。このぬくもりが腕の中に戻ったことを、僕は心から嬉しいと思った。 家に着くと、ハーマイオニーが僕たちを出迎えた。意識を失い、僕に抱き上げられている彼を見て、眉を顰める。 「ハリー、後のことは任せてお風呂に入って身体を温めて」 「後でいい。先に彼を部屋に……」 そう言った瞬間、横から伸ばされた手が、彼を抱き上げた。 「……ロン？」 「僕が運ぶから、君は温まってきなよ。君まで風邪引くよ？」 そしたら看病どころじゃないだろう、とロンが続ける。濡れるのも構わずに彼を抱き抱えるロンを、僕は驚きも露わに眺めた。 「ほら。早く行って。お湯張ってあるから、ちゃんと温まってこいよ」 言って、ロンが慌てて二階に上がっていく。さっさとね、と言い残し、ハーマイオニーがその後を追った。 二階から人の声が聞こえてくる。恐らく皆彼の部屋に居るのだろう。 濡れた髪を掻き揚げて、僕は小さく笑みを浮かべた。 next |