三日もすると、寝台の上で身体を起こすことが出来る様になっていた。全く、マグル界で感じた身体の重さはなんだったのだろうか。 　三日間、母は毎日の様に部屋を訪れたが、父とはまともに顔を合わせていなかった。どうやら僕が眠っている時には部屋に来ているらしい。何かを言う価値も無いと思われる程に呆れられてしまったのだろうか。それとも母にでも窘められて、体調の悪い息子を叱責するのは控えたのだろうか。母の考えも判らないが、父がどう思っているのかも僕には判らない。 　当然の様に、僕は両親にハリーとのことを話してはいなかった。ただ、報道を目にしていればハリーにマルフォイ家などの死喰い人を輩出した家に報復しようという意図がないという不自然さに気が付いたかもしれない。ハリーは黙っていたけれど、僕は彼が魔法省に対してマルフォイ家を庇う態度をとっていることには気が付いていた。僕が気が付いたのだから、父や母がその不自然さを気に留めていても不思議ではない。そして、今回のことで両親はハリーとのことを知ってしまった筈だ。 　お二人は、どう考えているのだろうか。 　溜息を吐いて、僕は目を閉じた。 「全く、情けない」 　暫くうつらうつらしていた僕は、耳に入った声で目を覚ました。光が目に刺さる。眩しさに目を細めて室内を見渡すと、寝台の横に立っている父の姿が目に入った。目を開けた僕に気が付き、父が目を細める。短い沈黙が訪れた。小さく咳をして父が目を逸らす。視線が微かに彷徨った。 「……気分は、どうだ？」 「はい。……あの、良いです。……前よりは」 「……そうか。……いや、いい。横になっていなさい」 　上体を起こそうとすると、父がそれを止めた。僕が寝台に横になり、父が窓の外に視線を向ける。再び沈黙が訪れた。 　父の顔を見上げ、僕は小さく喉を鳴らした。謝罪を、と口を開いたが、それは声にならなかった。僕は後悔していない。迷惑をかけたことに対しての謝罪はしたいが、父は僕の行動に対しての謝罪を求めているのではないだろうか。駆け落ちは、マルフォイ家の跡取りの行動としては褒められたものではない。僕は口先だけの謝罪はしたくなかった。 「……あの」 　そう口を開いた僕の声に被って、父が溜息を零した。それから僕を見て目を細める。僕はもう一度口を開くことが出来なかった。 「……ゆっくり休みなさい」 　沈黙の後、父は静かにそう言うと部屋を後にした。 　父の後ろ姿を見送ると、僕はまた溜息を零した。動けない身体がもどかしかった。父と母がどう考えているのかが判らない。そして、ハリーが今どうしているかも判らない。彼は魔法界に戻ったのだろうか。それなら、また彼は魔法省の宣伝に使われるだろうから、新聞にでも目を通せば直ぐに判る筈だ。それなのに、両親にそれを尋ねるわけにもいかず、自分で調べることも出来ない。僕はもう一度溜息を吐いた。 next

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