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窓から差し込む陽光にドラコは目を覚ました。ドラコはいつもの様に清潔な衣服を身につけ、整えられた寝台で眠っているらしかった。 ハリーは奇妙なところでまめならしく、ドラコを抱く時は優しく丁寧で、後始末も忘れない。将来の予行練習も兼ねているのだろうかと、ドラコは喉の奥で嘲る様に笑った。 いくらハリーが優しく抱こうと、不自然な行為に負担が無いわけではない。起き上がろうとして、ドラコは再び寝台に沈み込んだ。最近はハリーからの呼び出しが頻繁過ぎる。それでも、拒絶することは出来なかった。それでなくとも、スネイプには怪しまれているのだ。いっそ知られてしまった方が楽になれるのではないだろうか。そう考えもしたが、父親に知られることを思うと、ドラコはハリーを受け入れるしかなかった。スネイプに知らせることを考慮するには、あまりにも回数を経てしまっている。 いずれポッターが恋人を見つければ、こんなことは終わる筈だ。 ドラコは天蓋を睨み付けた。同性同士の生殖行為の真似事など、無意味で無価値でしかない。いずれ代わりがいらなくなれば、ハリーは自分のことなど放っておくだろう。 身体に残る鈍い痛みをやり過ごすと、ドラコはゆっくりと身体を起こした。立ち上がり、丁寧にたたんであったローブを羽織る。重い身体を引きずるように、ドラコは隠し部屋を後にした。 表面的には、日常は以前と変わりがなかった。ドラコは何事もなかったかの様に振舞っていて、ハリーもそれに倣っていた。今となっては、ドラコはグリフィンドールの面々に関わるのは嫌だった。出来ることなら顔も見ることなく過ごしたい。そう思っていても、合同の授業では顔をあわせないわけは行かない。そして、教授に勘繰られるのが恐ろしくて、ドラコは以前ならそうしていた筈とグリフィンドールに嫌味を言うのを止められなかった。そうすれば、関わらないわけにもいかない。それでもハリーと目を合わせたくなくて、最近ではドラコが絡むのはロンかハーマイオニーが相手のことが多くなっていた。普段通りに振舞おうとする自分を威圧する様に、秘密を知っているのだとハリーが微かに目を細める。その度に、喉の奥に冷たく固いものが蓄積されていく様だった。 授業が終わると、ドラコは大広間には向かわずに図書室に向かった。授業で出されたレポートの為に本を借りると、ドラコはそのまま寮に向かって歩き出した。魔法薬の授業でハリーと目が合った。そのことで、ドラコは昼食に行くことを止めてしまったのだった。 人の居ない廊下に靴音が響く。生徒の殆どが大広間に居るという安心感から警戒心もなく歩いていたドラコは、突然腕を引かれて身体を強張らせた。勢いのまま引き寄せられ、温かな感触に包まれる。薄暗い部屋で、ドラコは抱き締められていた。馴染みのある匂いが鼻腔を擽る。相手がハリーだと判ると、ドラコは諦めたように力を抜いた。 唇が重ねられ、歯列を割ってハリーの舌が入り込んでくる。拒絶することは出来ないので、ドラコは大人しく終わるのを待つしかなかった。人形の様に立つドラコの後頭部をハリーの手が固定する。口腔を丁寧に愛撫され、ドラコは耐える様に拳を握り締めた。 決して応えないドラコに焦れた様に、ハリーの手がドラコの身体を弄りだす。ローブの中に入り込んだ手がドラコの脇腹を撫ぜ、ゆっくりと服の上を滑った。冷たい壁が背中に当り、ドラコの身体が微かに震える。身体を使ってドラコを壁に押し付けると、ハリーはキスをしたまま愛撫を続けた。 息苦しさにドラコの顔が歪む。身体から力が抜けてしまい、立っていられなくなったドラコは目の前のハリーのローブを握り締めた。ハリーにしがみ付くのは嫌だった。しかし、それが不満なのかハリーが執拗にドラコを攻め立ててくる。膝の力が抜けて、ドラコは咄嗟にハリーにしがみ付いた。ハリーがドラコの腰に手を回して床に座り込みそうになるドラコを支える。悔しさに、ドラコはハリーの背に爪を立てた。ローブの布地に邪魔されて意味がないと判ってはいるが、ハリーの思惑通りになるのが悔しかった。 執拗な愛撫から解放されると、ドラコは息を吐いた。ハリーに支えられたままの体勢は屈辱的で、ドラコは床に視線を向けたままハリーと目を合わせようとしなかった。 「大丈夫？」 白々しいハリーの声が聞こえる。耳元に顔を寄せたハリーが、小さく笑った様な気がした。ドラコが沈黙で応えると、ハリーがドラコの身体を壁に寄り掛からせた。 「続きは今夜。いつもの部屋で」 耳元で囁き、白い肌に軽く口付けを落とす。俯いて床を睨みつけているドラコの手に紙袋を掴ませると、ハリーはそのままドラコを残して薄暗い部屋を出て行った。 温かな紙袋から美味しそうな匂いがした。彼は自分が昼食を抜いたことを知っていたのだろうか。そう思った瞬間、喉の奥から笑いが零れた。 彼は骨の浮き出た病人の様な身体を抱くのが嫌なのだ。 ドラコは溜息を吐いた。彼が自分を心配するなど有り得ない。ドラコはいつの間にか床に落としていた鞄を拾うと、部屋を出て寮に向かった。 寮の自室で口にしたハリーから渡された昼食は、飲み込む度に喉の奥につかえる様で、何の味もしなかった。 next |