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「マルフォイ？」 声を掛けると、微かな寝息がそれに応えた。薬が効いてきたのだろう。どうやら彼は眠ってしまったらしい。 ハリーは自分にしがみ付くドラコを寝台に横たわらせ、上掛けを整えた。頬に触れると、やはり熱い。ハリーはそっと瞼の上に口付けを落とした。 「僕は君が好きだよ……」 囁きに、応えは無い。ハリーは微笑を浮かべた。 ドラコは優しいハリーは好きだと言った。けれども、それはハリーがドラコに抱く好きという感情とは異なるものなのだろう。ハリーはドラコに触れたいと思うが、ドラコはきっとハリーに抱かれたいとは思わない。 ドラコの細い髪に触れると、それはさらさらと指の間を擦り抜けた。 「これからどうしようか？ どうすれば良いんだろうね？」 囁きながら、穏やかに眠るドラコの顔を眺める。ハリーは泣きたくなった。 告白されたドラコが迷うことなく断るのを、ハリーは何度も見ている。だから、ドラコの中にあるのが家にとってどうか、父親にとってどうかということだけだということを知っている。ドラコにとって、相手の容姿や性格は意味を成さない。自分が相手をどう思っているかさえ、意味のないことなのだ。 例えば彼が優しいハリーは好きだったとして、どうなるというのだろう？ 現実のハリーも優しいのだと示しても、ハリーがドラコに向ける感情とドラコがハリーに向ける感情はどこまでも食い違ったままだろう。ハリーは彼の恋愛の対象にはなり得ない。何故なら、父親がそれを望まないから。だから、彼の中には始めからその選択肢さえない。 「僕は、君が好きだよ……」 再度言って、軽くキスを落とす。自分が彼に触れられるのは、歪んだ関係にある間だけだ。 優しくしたいと思う。夢の中のハリーを相手にしている時の様に、甘える様に縋って欲しい。しかし、それは叶わない望みだ。ドラコの望みとハリーの望みは、永遠に交わらない。 穏やかに眠るドラコの白い面に、涙の雫が零れ落ちた。 next |